ハッチングのトラブル解決方法
ハッチングは、建設CADで最も「重くなる」「固まる」「消える」原因になりやすい要素です。
本記事では ARES・AutoCAD 共通の“現場で効く”ハッチング最適化テクニックを解説します。
密度・尺度・境界の調整から、複写・ブロック化・画層運用、印刷品質(CTB)まで網羅。
図面動作を軽くしたい方、ハッチングトラブルを根本から改善したい方に役立つ内容です。
※ハッチングのトラブル解決は、初心者向けの「基本講座」ではなく、実務レベルの「応用講座」の中で扱う内容です。
建設業務で図面を仕上げる段階で重要となるため、基礎操作を習得してから学ぶことを前提としています。
目次
1.ハッチングが重くなる主な原因
ハッチングが図面を重くする理由は以下の通りです。
・ 密度(パターンの細かさ)が高すぎる。
・ 境界が複雑・閉じていない・重複線が多い。
・ 大面積に高密度ハッチを適用している。
・ 複数の大きなハッチングが同一画層に大量にある。
・ 画像・外部参照と重なり処理コストが増えている。
特に建築・土木図面では、面積の大きいハッチングが PC 負荷の原因になることが多く、
密度と境界処理を最適化するだけで動作が劇的に改善します。

2. ハッチングを軽くする基本テクニック

● 密度を下げる(最も効果的)
ANSI31などのハッチングは、密度が高すぎると重くなります。
実務では以下を目安にすると快適です。
・建築平面図:尺度 30〜80
・土木図面の大面積:尺度 100〜200
・パターンが細かい場合:200〜500
ハッチングは「見た目は変わらず大幅に軽くできる」ことが多いので、最初に調整すべきポイントです。
● 境界を整える(消える・エラーの原因No.1)
境界線が閉じていない/重複していると計算負荷が増えます。
改善手順:
1.境界線を選択する。
2.ポリライン化(JOIN) して閉じた境界にする。
3.極小ギャップを修正する。
4.再度ハッチングを適用する。
境界が明快になると、削除や移動も高速化します。
● 大面積ハッチは「分割または画像化」も有効
・敷地の全面を細かいハッチで埋めている。
・田畑・舗装の大面積パターンがある。
・既存図データが複雑。
という場合は、
・ポリラインで分割する。
・画像化(透過PNG)して軽くする。
・外部参照化して読み込み負荷を分散する。
などが有効です。
3. 複写・ブロック化・画層運用の“実務テクニック”

● ハッチングを複写すると重くなる?
ハッチングを複写すると、境界情報もコピーされるため負荷が倍増することがあります。
対策:
・必要な部分のみ 境界を複写 → 再度ハッチングを適用(軽くなる)。
・既存ハッチをむやみにコピーしない(特に大面積)。
● ブロック化すると軽くなるケース
ハッチングを含む要素を まとめてブロック化すると、
CADは「ひとまとまりのオブジェクト」として処理し、軽くなる場合があります。
ただし欠点も:
・編集するときにブロック編集が必要。
・不要に大きなブロックを作ると逆に複雑化する。
👉 頻繁に編集しないハッチングはブロック化が向いています。
● 画層を分けると処理が劇的に改善する
ハッチング専用画層を作ると、管理・印刷・表示が非常に楽になります。
例)
・HATCH-AREA(面積)
・HATCH-PAVE(舗装)
・HATCH-GRASS(植栽)
メリット:
・ハッチングだけ非表示/凍結できて軽い表示にできる。
・印刷で濃度を調整しやすい。
・CTBでの線の太さ管理が簡単。
4. ハッチングが「消える・表示されない」場合のチェック
✔ 画層が非表示・凍結になっている
ハッチング専用画層を ON にする。
✔ 表示スタイル(ハードウェアアクセラレーション)
ARESでは「性能向上モード」で表示が変わることがあります。
✔ 塗り潰し表示がOFFになっている
「FILLMODE」または表示設定を確認。
✔ 外部参照内のハッチが見えない
元図側で画層設定を見直す。
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5. 印刷でハッチングが濃い・薄い問題を解決する(CTB連動)
ハッチングは密度・色・透明度の影響を大きく受けます。
対処法:
・ハッチング専用画層に色番号を固定
・CTBファイルで線の濃度(Screening)を調整
・透明度を設定して重なりを軽減
👉 CTB最適化ページへの内部リンクを設置するとシリーズ化が強化されます
6. ハッチング最適化チェックリスト(保存版)
・密度(尺度)が適切か?
・境界は閉じているか?
・壊れた境界線がないか?
・外部参照に分けられる部分はあるか?
・不必要な大面積ハッチはないか?
・画層は整理されているか?
・印刷(CTB)の濃度設定は適切か?
これらを改善すると、図面が一気に軽くなり作業が快適になります。
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